テオフル・ゴーチエのこの作品がまさか文庫本で出ているとは思わず、何年、いや、何十年かハードカバーを探していました。ふと目に付いたこの中古本を購入し、いずれの「積ん読」を差し置いても読んでしまいました。
「田辺貞之助訳」とされ、芥川訳もあるこの作品、さぞ古めかしい和訳かと思いきや、さにあらず、読みやすい、割りと現代的な日本語に訳されており、目を見張る美しい表現、想像するに空恐ろしい表現が随所に見られる傑作となっていました。
作品もしかり。吸血鬼のクラシック版と称される「死霊の恋」ばかりでなく、ポーの「早すぎた埋葬」を彷彿とさせるオニュフリユスや、怪奇幻想の逸話は悪魔の話は小気味よくテンポよく、軽快な面白味が感じられました。